思春期:夏休み明けのきつさ
九月を迎え、街の空気が秋へと移り変わるこの季節。「朝どうしても起きられない」「登校しようとすると激しい頭痛や吐き気がする」「体が重くてベッドから出られない」――代官山やまびこクリニックの診察室には、2学期の始まりとともに切実なご相談が多く寄せられます。
長い夏休みに夜型の生活やゲーム・動画の視聴が続き、生活リズムが崩れてしまった結果、新学期のスタートと同時に動けなくなってしまうお子さんは決して珍しくありません。ご本人は「みんなと同じように登校できない自分」に強い焦りや罪悪感を抱き、親御さんもまた「育て方が悪かったのではないか」「本人の甘えではないか」と思い悩まれ、ご家庭全体が重い空気に包まれてしまうことも少なくありません。
しかし、まず知っていただきたいのは、「これは決して本人の意志の弱さや怠けではなく、思春期特有の心と身体のメカニズムが深く関わっている」ということです。
思春期は心身が急速に大人へと変化する時期であり、身体面では急激な成長に自律神経系の調整が追いつかず、血圧や体温の調節、睡眠・覚醒リズムが不安定になる脆弱性を抱えています。朝に血圧が上がらず起き上がれない「起立性調節障害」などはその代表例です。心理面でも、自立への模索、友人関係や評価への過敏さ、将来への不安など、多くの葛藤に揺れ動いています。夏休みに乱れた体内時計という身体的要因に、学校再開への緊張やプレッシャーという心理的要因が重なることで、心身のバランスは容易に崩れてしまいます。身体の不調は、思春期の心と身体が限界を知らせるSOSのサインなのです。
焦って「明日から元通りに行かせよう」と無理をさせると、緊張を高めて症状を長引かせる要因になります。まずは以下の初期対応を意識してみてください。
「身体の症状」として受け止める
だるさや起きられない状態を気持ちの問題と決めつけず、自律神経や体内時計の乱れという身体の不調として理解します。
* 「寝る時間」より「起きる時間と朝日」を整える**
早く寝かせようと焦らせず、起床時間を一定にして朝の光を浴びることから体内時計のリズムを整えていきます。
家庭を「安全基地」にする
登校できないことを責めず、つらさに耳を傾け、家を心身を安心して休められる場所に保つことが回復への近道です。
当クリニックでは、思春期の不調に対して医学的・多角的な視点から丁寧に向き合う診療を行っています。
多角的な診察とアセスメント
単なる生活リズムの乱れか、身体疾患か、あるいは発達特性や環境ストレスが関与しているのかを丁寧に評価します。
生活再建と心身両面のアプローチ
生活スケジュールの段階的な再建を支えるとともに、漢方薬や対症療法、心理的対話のアプローチを組み合わせます。
* **ご家族への助言と環境調整**
家庭内での適切な距離感や声かけを助言し、必要に応じて学校側と連携して別室登校や遅刻登校などの段階的な調整を支援します。
思春期のつまずきは、自分自身の心と身体の「トリセツ(取扱説明書)」を作るための大切な転換期でもあります。ご家庭だけで抱え込まず、どうぞ専門家を頼ってください。私たちは、お子さんとご家族が本来のペースを取り戻せるよう、じっくりと伴走してまいります。


