失敗を大切にしよう

以前、「楽しいから行動する」ことを大切にしようとお話ししました。楽しさを大切にすること、いまを大切にすることは自ら行動する主体性と、変化に対応し、自ら変化を起こしていこうとする積極的な姿勢を育むことになるでしょう。「楽しいから行動する」ことからさまざまな効果が期待できます。

「楽しいから行動する」ことは事前に予測できなかった思いがけない変化に繋がる可能性もあります。さまざまなことに挑戦する変化は、進歩や成長のこともありますが、多くの失敗を生み出すことに繋がります。失敗しない人などいません。

やまびこには、「子どもに楽しい体験を積んでほしい。自信を持ってもらいたい、子どもの自己肯定感を高めたい、そのために成功体験を積ませてあげたい。」このようなご相談にいらっしゃる親御さんもたくさんいらっしゃいます。「成功体験」のために習い事を渡り歩く人もいます。いろいろ試してみても上手くいかず、子どもは意欲を失い、それに反して親は「成功体験」を探してますます躍起になる。そんなお話しをお聞きすることもあります。「我慢できない自分の子どもは発達障害なのではないか。」と悩みをお話しになる親御さんも少なくありません。

もちろん、成功体験自体が悪いというつもりはありません。成功の喜び自体が成長の糧です。成功した喜びを感じたり人と共有することも人の成長に役に立ちます。それでも私は、失敗の体験はお子さんにとって成功より貴重なのだとさえ考えています。

失敗の体験に、私たちは「どうして失敗したのだろう。」と振り返ります。これは、あたかも反省しているように聞こえますが、多くの場合、落胆と後悔です。ところが、落胆と後悔は、その後の望ましくない事態にも繋がりかねません。失敗体験が恐怖とともに記憶されることになり、同じ失敗を繰り返すことに繋がりかねません。「なぜ失敗したのか!反省せよ!」と親から詰め寄られるとお子さんは萎縮してしまうだけでなく、失敗を恐怖とともに記憶して、同じような場面に出会ったときに恐怖とともに思い出します。そして、同じ失敗を繰り返す悪循環に陥るのです。

私は、失敗体験を恐れないことが大切だと考えています。失敗した時にまず心掛けることは、気持ちを切り替えて失敗の記憶を消去することだけです。反省は、後でゆっくりやれば良い。失敗を乗り越えられるようになったお子さんはたくましく成長します。

失敗を成長の糧にしていただきたいと思いますが、それでも、失敗の連鎖から抜け出せなくなったり、どうしたら良いか分からなくなったら、専門家に助言を求めてください。